ETIC.考察

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▲Wikipedia スフィンクスの記事より引用。

■今どきの若者、という幻想

『今どきの若者は…』というフレーズは、エジプトでピラミッドが建設された時代にはもう既に存在していたという説がある。世界初の水時計を発明し、古代には既に公共事業が始まっていた可能性もあるという、早熟な高度文明を感じさせる歴史深い国だ。
だが現代、国際舞台でお目にかかる機会はなかなか少ないように感じる。

その、エジプトに位置するフィンクスの視線の先にケンタッキー・フライドチキンが位置していることは最早周知の事実であろう(ちなみに2階はピザハットである)。国だけでなく、世界地方の観光名所の立役者スフィンクスも、なかなか大変そうだ。

■NPO法人ETIC.とFAAVO、真夏の決起

NPO法人ETIC.FAAVOの打ち合わせに僕が同席したのは、8月の中旬だったと記憶している。

窓の外の新緑の葉が太陽の熱光を全力で反射し、蝉が燃えるように鳴いていた日だった。

そして、本企画の担当者である黒田さんは、僕と同い年の25歳だった。
門倉くん、釜石さんはなんと現役大学生と言う。

この3名は、本当に見事な連係プレーで適度な情熱と共に淡々と打ち合わせを進める。気が付くと冷たい緑茶はすっかりとぬるくなり、凝結した水分でたくさんの水たまりがテーブルの上に出来上がっていて驚いた。

今回NPO法人ETIC.が事務局を務める『地域仕事づくりチャレンジ大賞2012』。
この大規模プロジェクトを20代前半の黒田さん、門倉くん、釜石さんが運営すると同時に、FAAVOを通じてグランプリ受賞団体へ贈呈する資金を増やそうと考えるのだから、驚きである。
と、いうか、ETIC.と出会ってから僕はずっと驚きっぱなしである。

彼らが日本の若者であることも自明だが、では僕たちは、今なお日本の巷を騒がせ続ける『今どきの若者』には、どこにゆけば会えるのだろうか?


▲Wikipedia Rural areaの記事より引用。http://en.wikipedia.org/wiki/Rural_area

今年の夏、僕は友人と、日本のとある田舎を車で周っていた。
昼時、食事をしようとガイドブックに載っている飲食店を周ったものの『ただいま満席』『休憩中』さらには『本日臨時休業』という看板までもが出ていた。日曜日の観光地にも関わらず!
仕方なく入った某大手ファミリーレストランでは、無菌キャンペーンのようなことをやっていた。その旨を1語1句間違えずに説明しながら、光り輝く清潔そうな若い女性店員が席まで案内してくださった。就職活動のグループ面接で決してトラウマを作らないタイプである。

そこで僕たちは四国産の有機野菜サラダや北海道産のズワイガニ、鹿児島産の黒豚を食べ、北関東産のビールを飲んだ。確かにそれはとても美味しく、話は弾み思い出深かったのだが、別にその土地でなくとも出来る体験だったなと、東京の部屋に夜戻り1人歯を磨いていて思った。その話を友人とすると、確かにそうだと賛同してくれた。
だが僕たちは、何を求め何のために田舎へ行ったのか、今になると全くよくわからなくなっていた。

■私たちの思い描く田舎は本当にユートピアか

そこでちょっと考えてみた。
私たちは、田舎へ勝手な幻想を抱き、それを地方の人々へ押しつけているのではないか。

様々なプロモーションを通じイメージを強要された地方の人々は仕方がなく、都市部が望む『田舎っぽさ』を演じる。観客が返ったとたん生き生きと、都市に住む私たちと同じようにハンバーガーを食べ、シネコンで映画を観て、複合娯楽施設で買い物をし、ドライブを楽しみながらJポップを聞いているのではないのだろうか。

もし『今どきの若者の存在』が嘘、『おふくろの味』も嘘、『田舎っぽさ』も嘘、『無菌』も嘘、とすると、私たちが生きている世界の現実は一体どこにあるのだろうか?
だがそもそも、私たち自身も何者であり、ここがどのような場だかなんて、わかったものではないのだ。

東京は眠らない街、というよりも闘い続ける都市、である。

24時間闘えますか、というフレーズを初めて聞いた時、大人は皆眠らないのかと衝撃を受けた。

昼食後のお昼寝の時間が大好きだった僕にとって、それは残酷な未来であり、受け入れがたい将来像であった。ずっと子どもでいれるよう、涙ながらに万全の対策を立てようと決意したほどである。

だが実際のところ、恐ろしいことにそれが現実であると世間を知るほどに痛感させられた。少なくとも、24時間闘えない地方の商店やサービスはどんどん廃れてしまっている。たぶん、誠に残念でならないが、僕たちが旅行中に入れなかった小さな飲食店も、いずれあの輝かしい大手ファミリーレストランへ駆逐されてしまうのであろう。

少しでも賃金を安くし、少しでも稼働時間を長くし、少しでも多く売りさばく。そして買いたたく。デス・スパイラルへ突入したトウキョウ・ニッポンに、田舎への憐憫の情は一切残っていないのだ。

■人が育ち、地域が育ち、仕事が生まれる。そして希望湧く未来へ。

だが、地方が田舎の仮面を被るしか生き残る道が残されていない国はどう考えても魅力的ではない。

先述した、NPO法人ETIC.が事務局を務める『地域仕事づくりチャレンジ大賞2012』では、日本各地の地域で活性化活動を行っている若者・団体がどのような企画を実施してきたかをプレゼンする。
それらの発表を参考にオンライン&オフラインの聴衆が投票を行い、グランプリ団体がたった1つに絞られる。その団体こそが『地域仕事づくりチャレンジ大賞2012の賞金』、そして『NPO法人ETIC.FAAVOを通じて集めた支援金』を、自分たちの企画資金として受け取ることができるのである。

面白いことに、このイベントへ出場する若者・団体へは一切闘う意志が見受けられない。
また、『田舎っぽさ』を演じさせられている気配も感じられない。自分たちの姿かたち、置かれている状況を拒絶することなく、また無意味な敵対心を都市に持つこともなく、ただひたむきに『世界』と共に歩もうとする意志がまっすぐに伝わってくる。

私たちは今なお仮面を被り、闘い、勝てば官軍負ければ賊軍という思想のもと生かされている。

もちろん結果は必要である。成果が無ければ何も集まらないし続かない。
優しいだけでは潰されてしまうのがこの社会である。

だが、だからこそ、『今どきの若者』が企てている、安い賃金で働かなくとも、稼働時間を長くしなくとも、昨日より多く売りさばかなくとも、相手の気持ちに目をつぶり買いたたかなくとも、生きてゆける持続可能なアイディアへ耳を傾けてみたいと切に思う。

本当に闘わず、争わず、傷つけあうことなく地方と都市は共存できるのか。
私たちの夢は果たしてそこで叶うのか。
きっとこれは、スフィンクスが身を持って私たちに問いかけている、小気味よい謎かけなのだ。

ETIC.は、本物の若者がどこで、どのような活動を行っているかを包み隠さず教えてくれる。

あの夏の日に見た、3人の若者のあどけない身振りと実直な言葉たち。
それは要するに、私たちにかけられた『若者』と『田舎』に対する幻想を打ち破る呪文に違いないのである。果たしてETIC.の3人は、ラスボス・スフィンクスとピラミッドの呪いを解くことは出来るのか?
とどのつまり、周囲の応援の気持ちでHP総量が大きく変わってしまう彼らである。その未来がどうなるかは実際のところ、あなた自身がどのような未来を選択したいか、その気持ち次第なのである。

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